シロガシラ
農作物への影響が甚大、勢力を拡大中

- 漢字表記
- 白頭
- 英語名
- Light-vented Bulbul
- 学名
- Pycnonotus sinensis
- 分類
- スズメ目ヒヨドリ科
- 渡り区分
- 留鳥
- 体長
- 19cm (スズメよりやや大きい)
- レッドリスト
- 準絶滅危惧(NT)
- 保全
月別の遭遇しやすさ(個人の経験ベース)
沖縄で聞こえる「ビジョン、ビジョン」という綺麗な声の正体はこの子。
森、草原、畑など市街地以外の場所なら、高確率で遭遇します。
沖縄で黄色の鳥は珍しく、白い頭も目立つことから遠くからでもよくわかります。
シロガシラは、沖縄島や八重山諸島以外でも、九州北部の一部に留鳥として分布しています。
沖縄島では1976年に糸満市で初めて記録され、1996年には名護市や本部町、1998年には国頭村や離島まで分布を拡大し、現在では、本島全域で見られるほど定着しています。

もともと渡りによって飛来したのか、それとも人の手によって持ち込まれたのかは不明ですが、農耕地や人家の近くでもよく見られるようになり、沖縄の身近な鳥の一つとなっています。10羽の群れで行動し、繁殖期には目立つ場所で活発にさえずる姿が観察されます。
農作物への影響



シロガシラは雑食性で、昆虫類のほかに果実や野菜なども食べます。沖縄では農作物への被害が深刻化しており、トマト、サヤインゲン、キャベツ、レタスなどの葉菜類、根菜類、さらには花木類まで影響を及ぼしていると報告されています。防鳥対策がされていない畑では被害が特に甚大で、収穫を放棄する農地が出るほど深刻な状況だそうです。
鳥除けのグッズなども慣れてしまい、効果が薄くなっているようです。
以前はヒヨドリが主要な加害種でしたが、ヒヨドリに代わって農作物を荒らす存在になっています。特に1~2羽で行動するヒヨドリと異なり、シロガシラは数十羽の群れで農作物に被害を与えるため、影響がさらに拡大しています。
畑でシロガシラを撮影していると農家さんから「農作物を食べられて困っている」との話を聞くことが多々あります。それほど影響力が強いようです。
生態系への影響

シロガシラは新しい生息地への適応力が強く、人に慣れていることもあり分布域を拡大し続けています。その結果、優先種であるヒヨドリとの競争が発生し、ヒヨドリが占めていた生息地が脅かされる可能性が指摘されています。すでに一部の地域では、シロガシラがヒヨドリに代わって優勢種となっているという報告もあります。
また、シロガシラの定着は農作物への影響だけでなく、沖縄の貴重な固有種への影響も懸念されています。特に、多様な果樹類が栽培されている北部地域への進出は、生態系のバランスにも影響を与える可能性があり、今後の動向が注目される鳥の一つです。

沖縄本島でたくさん見かけるのに準絶滅危惧の理由
本亜種は以前、亜種ヤエヤマシロガシラP.s.orii とされていた。最近の研究によると、本亜種と中国 大陸の福建省以北に生息する基亜種との分類学的な比較では、同基亜種の南部地域に生息する集団 との形質的な形質に分化が見られず、ヤエヤマシロガシラは基亜種のシノニムである可能性を指摘 する見解も見られる(Yamazaki, 2008)。このことから日本鳥学会編(2012)では、シロガシラ P.s.s -inensis に変更されている。今回の改訂ではこれに準拠した。なお、沖縄島南部及び周辺離島で生 息するシロガシラの個体群は、1970年代に人為的な持ち込み個体が元になったものと考えられ、日本鳥学会編(2012)では「亜種不明」としている。IUCNカテゴリー:Least Concern (LC)* *IUCN は種として評価。本県改訂は基亜種シロガシラを選定している
改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版-動物編-より
改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版では上記のような特記事項が記載されています。沖縄本島に生息する個体は、人為的な持ち込みが元になっていると考えられ「亜種不明」になっているようです。そのため、亜種シロガシラは、八重山諸島の石垣島、西表島、小浜島、与那国島、波照間島などに留鳥として生息しているシロガシラのみに絞られ、数が多くはないようです。
参考:
植村慎吾「決定版 見分け方と鳴き声野鳥図鑑350」
国立科学博物館「鳥〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系譜〜」
金城常雄「沖縄本島にお けるシ ロ ガシラの生態と被害防止対策」



















